1979年、ジョージ・ロイ・ヒル監督が13歳のダイアン・レインとローレンス・オリヴィエを組み合わせて生み出した、パリとヴェニスを舞台にした純愛の名作。ダイアン・レインにとってスクリーンデビュー作となった本作は、公開時にはタイム誌の表紙を飾るほど話題を呼んだ。

「バフィ・キャシディ&サンダンス・キッド」「スティング」で知られるヒル監督が、今度は少年少女の知性的な初恋を、コメディと感動を交えながら繊細に描いた。アカデミー賞作曲賞(ジョルジュ・ドルリュー)受賞。IMDb7.4点。

映画基本情報

タイトル:リトルロマンス(A Little Romance)
公開年:1979年
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
原作:パトリック・コーヴァン「E=mc2 Mon Amour」
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ローレンス・オリヴィエ、ダイアン・レイン、テロニアス・バーナード、アーサー・ヒル、サリー・ケラーマン
上映時間:110分
製作:ワーナー・ブラザース
アカデミー賞:作曲賞受賞
ゴールデングローブ賞:助演男優賞(オリヴィエ)ノミネート

あらすじ

パリで暮らすアメリカ人の少女ローレン(ダイアン・レイン)は、13歳のインテリ少女。映画マニアのフランス人少年ダニエル(テロニアス・バーナード)と映画撮影の現場で出会い、互いの知性と感性に惹かれ合う。

ローレンの家族がアメリカへ帰国することになり、ふたりの時間が残り少ないと知った時、老いた紳士ユリウス(ローレンス・オリヴィエ)から伝説を聞く。「ヴェニスのため息橋の下で、夕暮れにカンパニーレの鐘が鳴る時、ゴンドラの中で恋人同士がキスをすれば——永遠に愛し合える」という。

ユリウスが実はスリの常習犯と知りながら、ふたりは彼と一緒にヴェニスへ向かう冒険に出る。大人たちを出し抜いて、夕暮れの橋に辿り着けるか。

心に残る名言集

名言①「恋人同士が夕暮れ時にカンパニーレの鐘が鳴る中、ヴェニスのため息橋の下をゴンドラで通り過ぎながらキスをすれば——ふたりは永遠に愛し合える」

“There is a legend which says that if two lovers kiss in a gondola, under the Bridge of Sighs, at sunset, when the bells of the Campanile toll — they will love each other forever.”
― ユリウス(ローレンス・オリヴィエ)

映画全体を動かす核心の台詞。IMDb、Letterboxd、各映画評論サイトで本作の象徴として繰り返し引用される言葉。オリヴィエはこの伝説を語る場面に特別な重みと温かみを込め、少年少女の「信じたい心」を見事に揺り動かす。実際にこの映画を観てヴェニスへ旅した夫婦が「橋の下でキスをして今も愛し合っている」という証言がIMDbのレビューに数多く残っている。

名言②「女性への愛——それが何より大切だ。それに次ぐもの(ずっと遠い2位だが)はフェラーリだ」

“Women! Above all things. A very, very distant second — is a Ferrari.”
― ユリウス(ローレンス・オリヴィエ)

ユリウスが人生の優先順位を語る場面での台詞。老いた詐欺師の口から出る「女性至上主義」の告白には、しかし確かな真摯さが漂う。コメディとして笑えながら、実は人生の本質を突いた言葉として複数の映画サイトで引用されている。

名言③「ハイデガーはそれほど難しくない——彼の論は主に語源論だ。なぜ何もないのではなく何かがあるのか、ということ」

“Heidegger isn’t all that hard. Why is there something rather than nothing at all.”
― ローレン(ダイアン・レイン)

13歳のローレンが当然のようにハイデガーを語る場面。映画の中でこの台詞は「この子供たちは普通ではない」という事実を軽やかに証明する。大人が首をかしげる哲学を子供が普通に議論するというギャップが、本作の知的なユーモアの核心。

名言④「彼女が私の人生にほんの少しの——ロマンスをもたらそうとした試みだった」

“She was an attempt to bring a little romance into my life.”
― ユリウス(ローレンス・オリヴィエ)

映画のタイトルに直接つながるユリウスの台詞。ダニエルに「それは悲しくないか」と言われ、「暗い劇場でロバート・レッドフォードを演じているふりをするより悲しいか?」と切り返す。老齢になっても人間が「ロマンス」を求め続けることを温かく肯定する一言。

名言⑤「ローレンとボギー——ローレン・バコールとハンフリー・ボガート。ふたりは一緒にいるべきだ」

“Because they belong together. Lauren and Bogie. Lauren Bacall, Humphrey Bogart.”
― ダニエル(テロニアス・バーナード)

ダニエルが名前の一致に気づいてローレンを「ボギー(ボガートの愛称)」と呼ぶ場面。アメリカ映画への熱烈な愛を持つフランス人少年と、ハイデガーを読むアメリカ人少女——ふたりの組み合わせを映画史の名カップルになぞらえる粋な発想が詰まっている。

名言⑥「フランス人は好きじゃない——アメリカ人は俺のことを好きじゃない。おあいこだ」

“I don’t like Americans. We’re even.”
― ミッシェル(タクシー運転手・ダニエルの父)

ダニエルの父が語る日仏(米仏)関係論。子供の純粋な愛を包む大人たちの俗っぽさと偏見が、本作のコメディ部分の核心をなしている。

こんな人におすすめ・必見シーン

「ビフォア・サンライズ」シリーズや「ムーンライズ・キングダム」が好きな方、純粋な初恋の物語に弱い方、パリとヴェニスの映像美を楽しみたい方に強くおすすめしたい。批評家に「大人のための子供映画」と評された知性的なラブストーリーだ。

13歳のダイアン・レインの演技は、後にオリヴィエ自身が「新しいグレース・ケリー」と絶賛したほど。すでにこの時点で女優としての才能が全開になっている。

必見シーン①:ため息橋でのキスシーン。夕暮れの光の中、鐘の音が響く中でゴンドラが橋の下を滑るクライマックスは、映画史上最もロマンティックな場面のひとつ。ジョルジュ・ドルリューの音楽(ヘンデルのラルゴをベースにしたテーマ)と相まって忘れがたい場面になっている。

必見シーン②:自転車レースのシーン。ヴェローナで追われるユリウスたちが、地元の自転車レースに紛れ込んで逃げる場面は、映画のコメディ部分の頂点。

必見シーン③:ローレンとダニエルの別れのシーン。パリの通りを車で去るローレンと走って追いかけるダニエルの場面は、「行かないでほしい」という言葉なしに別れの痛みを伝える演出の傑作。

登場人物紹介

ローレン(ダイアン・レイン):13歳でデビューを飾ったレインは、この作品でタイム誌の表紙を飾った。オリヴィエは「新しいグレース・ケリー」と称した。後に「不貞」「アンダー・ザ・タスカン・サン」などでアカデミー賞候補になる。

ユリウス(ローレンス・オリヴィエ):20世紀最大の俳優のひとりとされるオリヴィエが、晩年にこの小品に出演した。「ハムレット」「リチャード三世」などの大作とは対極にある愛すべき詐欺師を、コメディとペーソスで体現している。

ダニエル(テロニアス・バーナード):アメリカ映画に夢中なフランス人少年。本作を含む2本の映画にしか出演しておらず、その後俳優活動から退いた。

作品データ・制作秘話

「バフィ・キャシディ」「スティング」を生み出したヒル監督が、なぜこの小品に取り組んだのかについては諸説ある。ヒルは自身がフランス映画の大ファンであり、特にフランソワ・トリュフォーへの憧れがこの作品に反映されているとも言われる。実際に本作はトリュフォーの「大人は判ってくれない」から「ビフォア・サンライズ」への橋渡しとして語られることも多い。

パリとヴェニスでの実地ロケが多用されており、パリの映画撮影現場シーン(実際の撮影現場を使用)、ヴェローナの自転車レースシーン、ヴェニスのため息橋でのクライマックスと、それぞれのロケーションが映画に深みを与えている。

ジョルジュ・ドルリューがアカデミー賞を受賞した音楽スコアは、ヘンデルのラルゴを主テーマに据えたもの。「映画音楽史上最もロマンティックなスコアのひとつ」として今も語り継がれており、この音楽だけでもため息が出る。

総評・おすすめ度

おすすめ度:★★★★★(5/5)

「ため息橋の伝説」を信じる心を持った人すべてに届けたい一作。知性的で、コミカルで、ただただ純粋で——このような映画はもう作れないかもしれない。13歳のダイアン・レインと晩年のローレンス・オリヴィエの組み合わせは映画史の奇跡だ。

観た後でヴェニスに行きたくなる映画。いや、ヴェニスに行った後でもう一度観たくなる映画でもある。

名言の検証について:コトバミンに掲載している名言は、IMDb・Wikiquote・Rankerなど複数の海外データベースで原文を検証済みです。コトバミンでも以前から取り上げてきた名言については、今回改めて原文を照合・確認しています。検証プロセスの詳細はこちらをご覧ください。