ミレニアムシリーズ第4作にして、スウェーデンの伝説的作家スティーグ・ラーソンの死後、別の作家ダヴィド・ラーゲルクランツが引き継いだ新章の映画化。
監督はホラー映画「死霊のはらわた」や「ドント・ブリーズ」で知られるフェデ・アルバレス。リスベット・サランデル役にクレア・フォイ、カミラ・サランデル役にシルビア・フークスが配された。
映画基本情報
原題:The Girl in the Spider’s Web
公開年:2018年 / 監督:フェデ・アルバレス / 上映時間:117分
出演:クレア・フォイ、シルビア・フークス、スヴェリル・グドナソン、ラキース・スタンフィールド、スティーブン・マーチャント
音楽:ロケ・バーニョス / 製作:ソニー・ピクチャーズ
あらすじ
天才ハッカーにして悪を制裁する影の守護者、リスベット・サランデル。
彼女はNSAの元技術者フランス・バルデルから依頼を受ける。核兵器システムを制御できる危険なプログラム「ファイアフォール」を消滅させてほしい、という依頼だった。
しかしプログラムは奪われ、バルデルは殺害される。犯人の痕跡を追ううちに、リスベットは少女時代に見捨てた存在と再会する——姉のカミラだ。
カミラは国際犯罪シンジケート「スパイダーズ」を率いており、父ザラチェンコに虐待されながら育った過去を持つ。16年間の沈黙を経て、二人の姉妹の対決がスウェーデンの冬を舞台に幕を開ける。
心に残る名言集
①「あなたはリスベット・サランデルではないの? 悪を正す者。女性を傷つける男を痛い目に遭わせる者。……なぜ私だけ、誰も救ってくれなかったの?」
— カミラ・サランデル(シルビア・フークス)
クライマックスでカミラがリスベットに投げかける言葉。姉妹の16年分の断絶と怨念が凝縮された、映画最大の核心部。「悪を正す女」が自分の妹を見捨てていたという矛盾を突く、鋭い問いかけだ。
②「今、世界は燃える。そしてその火をつけたのはあなただと、みんなが知ることになる」
— カミラ・サランデル(シルビア・フークス)
権力と破壊を体現するカミラの台詞。シルビア・フークスの冷徹な演技と合わさって、強烈な印象を残す場面。
③「私はあなたのファンです。あなたをニュースで見ていました。二人の女性を暴行して、昨日無罪になったCEOですね」
— リスベット・サランデル(クレア・フォイ)
映画冒頭シーン。彫像を罠に仕掛け逆さ吊りにしたCEOに対して静かに告げる言葉。「悪を制裁する女」の本質がこの一シーンで観客に伝わる。
④「私は戻れなかった」
— リスベット・サランデル(クレア・フォイ)
カミラの「なぜ私を見捨てたの」という問いに対してリスベットが絞り出す一言。多くを語らないこの短い返答が、後悔と複雑な心理を雄弁に物語る。
⑤「残りはあなたの妻の口座に振り込む。口座番号を」
— リスベット・サランデル(クレア・フォイ)
被害女性への送金を終えた後、加害者の妻に向けて発する言葉。制裁と救済を同時に行使するリスベット流の正義の体現。
⑥「生きることへの恐怖——それが奴隷の本質だ」
— カミラ・サランデル(シルビア・フークス)
カミラが組織の論理を語る場面での言葉。権力の構造と恐怖支配の本質を鋭く言い表している。
こんな人におすすめ・必見シーン
ミレニアムシリーズのファン、女性主人公のアクション映画が好きな方、サイバー犯罪やNSA絡みの現代スパイスリラーに惹かれる方に向いている。
クレア・フォイはドラマ「ザ・クラウン」でエミー賞・ゴールデングローブ賞を受賞した英国女優。エリザベス女王とリスベット・サランデルという正反対のキャラクターをこなす振り幅に多くの人が驚く。
必見シーン①:凍った湖上のバイクチェイス。追ってくる警察車両をかわしながら湖面を高速疾走するリスベット。氷が割れ始める緊張感の中での逃走劇は、映像的な見せ場として出色の完成度。
必見シーン②:冒頭のCEO制裁。派手な格闘ではなく、知性と準備で罠を仕掛け静かに制裁を下す。最初の5分間でリスベット・サランデルという人物の全てが示される。
必見シーン③:姉妹の最終対峙。幼少期の邸宅を舞台に繰り広げられるクライマックス。クレア・フォイとシルビア・フークスの一触即発の緊張感は、本作最大の見どころ。
登場人物紹介
リスベット・サランデル(クレア・フォイ):天才ハッカーにして自警的正義の執行者。「リスベットは傷を武器にしている女性」とクレア自身が語っている。
カミラ・サランデル(シルビア・フークス):リスベットの姉。父の虐待を受けながらリスベットに見捨てられたと感じ、国際犯罪組織「スパイダーズ」を創設した。オランダ出身のシルビア・フークスは、ポール・バーホーベン監督作品でも活躍する実力派。
エド・ニーダム(ラキース・スタンフィールド):NSA捜査官。ドラマ「アトランタ」でブレイクし、近年ではアカデミー賞候補作品にも複数出演する演技派。
作品データ・制作秘話
原作者スティーグ・ラーソンはミレニアムシリーズを10作書く予定だったが、2004年に心臓発作で急死。著作権は婚姻関係のないパートナーではなく父と兄に帰属したため、ダヴィド・ラーゲルクランツに続編執筆が依頼された。
主撮影は2018年1月にベルリンで開始、ハンブルクのカットウィク橋でのシーンを経て、ストックホルムで4月に完了した。スウェーデンの冬景色と都市の陰影を活かした映像美は評価が高い。
全世界興収は約3500万ドルで製作費4300万ドルを回収できず、興行的には苦戦。しかしクレア・フォイの演技とビジュアルの質の高さは批評家から評価されている。
総評・おすすめ度
おすすめ度:★★★☆☆(3/5)
デヴィッド・フィンチャー版「ドラゴン・タトゥーの女」の哲学的な深みと比べると、本作はアクションとスパイスリラーの要素が前面に出ており、重厚さは薄まっている。
それでも、クレア・フォイが体現するリスベットの「傷を纏った強さ」と、シルビア・フークスが演じるカミラとの「見捨てた側と見捨てられた側」という構図は、映画に独自の感情的核心を与えている。
ミレニアムシリーズを知った上で「もう一つのリスベット像」として楽しむ作品。女性ヒーローの複雑な内面と行動力を楽しみたい方にはおすすめできる。
※ 名言の検証について:コトバミンに掲載している名言は、IMDb・Wikiquote・Rankerなど複数の海外データベースで原文を検証済みです。コトバミンでも以前から取り上げてきた名言については、今回改めて原文を照合・確認しています。検証プロセスの詳細はこちらをご覧ください。