ムーンレーカーの宇宙SF路線から一転、007が地に足のついたスパイスリラーに戻ってきた——ロジャー・ムーア版ボンドの最高傑作と評する声も多い1981年作。核暗号送信機ATACをめぐる争奪戦を軸に、両親を殺された女性メリナとの復讐と正義の旅が描かれる。

ガジェット依存を捨て、ボンドが自分の頭と体で危機を乗り越えるシリーズ随一の「リアル」路線。冒頭のブロフェルドとの対決から、雪山のスキーチェイス、水中戦、断崖絶壁の格闘まで、アクション映画の教科書のような構成。IMDb6.7点。

映画基本情報

タイトル:007 ユア・アイズ・オンリー(For Your Eyes Only)
公開年:1981年
監督:ジョン・グレン
脚本:リチャード・マイボーム、マイケル・G・ウィルソン(イアン・フレミングの短編集に基づく)
音楽:ビル・コンティ、主題歌はシーナ・イーストン
出演:ロジャー・ムーア(ジェームズ・ボンド)、キャロル・ブーケ(メリナ・ヘイブロック)、トポル(コロンボ)、ジュリアン・グローヴァー(クリスタトス)、リン=ホリー・ジョンソン(ビビ)
上映時間:127分
製作:EONプロダクションズ/ユナイテッド・アーティスツ
アカデミー賞:主題歌賞ノミネート

あらすじ

英国海軍のスパイ船がATAC(核ミサイル制御装置)とともに沈没。回収を依頼されていた海洋考古学者夫妻がヨット上で殺害される。ボンド(ロジャー・ムーア)は娘メリナ(キャロル・ブーケ)と組んで、ATACを巡る謀略の黒幕を追う。

ギリシャを舞台に展開するスパイゲームの中で、ボンドは信頼できる人物とできない人物を見極めながら、ソ連への漏洩を阻止しようとする。メリナの復讐心と、ボンドの正義感が時にぶつかり合いながら、二人は協力して危機に立ち向かう。

心に残る名言集

名言①「復讐に出る前に、まず墓穴を二つ掘れ」

“The Chinese have a saying: ‘Before setting off on revenge, you first dig two graves.'”
― ジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)

復讐に燃えるメリナを諭す場面でボンドが引用する中国のことわざ。ロジャー・ムーア版ボンドの珍しく真剣な説教シーン。IMDb・Wikiquoteで確認済み。

名言②「お前がどこで生まれようと、ギリシャ女は愛する者のために必ず復讐する」

“I don’t expect you to understand, you’re English, but I’m half Greek, and Greek women like Elektra always avenge their loved ones!”
― メリナ・ヘイブロック(キャロル・ブーケ)

ボンドの制止を振り切って敵の暗殺者を射殺したメリナの言葉。クールなボンドが口を挟む余地を与えない、強い女性キャラクターを象徴する台詞。IMDb・Wikiquoteで確認済み。

名言③「神父よ、罪を告白したい」

“Forgive me, Father, for I have sinned.”
― ジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)

神父に変装したQに気づかずに告白しようとするボンド。「軽いもんじゃないですよ、007!」というQの返答とセットで、このシリーズ屈指のコメディシーン。IMDb・Wikiquoteで確認済み。

名言④「君は持っていないけど、私も持っていない——それが緊張緩和(デタント)だよ」

“That’s détente, comrade. You don’t have it, I don’t have it!”
― ジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)

ATACをソ連将軍に奪われそうになった瞬間、ボンドが機器を断崖から投げ捨てながら放つ台詞。冷戦の「緊張緩和」という外交用語をジョークにする、ロジャー・ムーア版ならではのウィット。Wikiquoteで確認済み。

名言⑤「風光明媚なルートを通ってきた」

“I took the scenic route.”
― ジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)

命からがらのスキーチェイスを乗り越えて合流したボンドが、遅刻の理由をさらりと言い放つ一言。ロジャー・ムーアのボンドが持つ軽妙なユーモアの真骨頂。IMDb・Rankerで確認済み。

こんな人におすすめ・必見シーン

007シリーズの中でも「リアル寄り」のスパイスリラーを楽しみたい人に。ガジェットより頭と体で戦うボンドが見たい人におすすめ。シリーズの原点として「007 ドクター・ノオ」、ダニエル・クレイグ版の緊張感ある作品として「007 スペクター」もどうぞ。

必見シーン①:冒頭のブロフェルド対決。ヘリコプターを遠隔操作されたボンドが逆にハイジャックし、ブロフェルドを煙突に叩き込む場面。「髪型を直せ」という最後の台詞とともにロジャー・ムーアらしい余裕が炸裂。

必見シーン②:断崖絶壁の格闘シーン。クライマックスで敵の要塞に手がかり一つで登り始めるボンドとメリナ。ワイヤーなしで行われたスタントと、高所恐怖症をそそる映像が息をのむ。

登場人物紹介

ジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア):MI6の工作員007。本作ではシリーズ最もシリアスなロジャー・ムーア版ボンドが見られる。派手なギミックより実力で乗り越える場面が多く、ムーア自身が「最高の作品のひとつ」と評している。

メリナ・ヘイブロック(キャロル・ブーケ):両親を殺された若い考古学者。クロスボウを武器に復讐を誓う自立した女性。ボンドの説得に従いながらも、自分の信念を曲げない強さを持つ。

クリスタトス(ジュリアン・グローヴァー):ギリシャの富豪でボンドの協力者に見えるが——。ジュリアン・グローヴァーはハリー・ポッターシリーズにも出演した英国の名優。

作品データ・制作秘話

プロデューサーのアルバート・ブロッコリが「ムーンレーカーへの過剰批判」を受けて原点回帰を決意。本作では「ガジェット最小限・スタント最大限」の方針が取られた。主題歌「For Your Eyes Only」を歌ったシーナ・イーストンは主題歌映像に本人が登場した初のボンド映画という記録も持つ。

ロジャー・ムーアは当時53歳での撮影で「そろそろ限界」と感じていたと後に語った。実際にスキーシーンのスタントはルパート・バンスが担当した部分が多い。ギリシャのコルフ島やメテオラ(岩山の修道院)での撮影が観光地としても有名になった。

総評・おすすめ度

おすすめ度:★★★★☆(4/5)

ロジャー・ムーア版007の中で最もバランスが取れた傑作。ユーモアとシリアスさの配分が絶妙で、ボンドが「使える人間」として描かれる数少ない作品。メリナというキャラクターの強さもシリーズ屈指。007入門としても、シリーズファンの再鑑賞にも最適な一本。

※ 名言の検証について:コトバミンに掲載している名言は、IMDb・Wikiquote・Rankerなど複数の海外データベースで原文を検証済みです。コトバミンでも以前から取り上げてきた名言については、今回改めて原文を照合・確認しています。検証プロセスの詳細はこちらをご覧ください。