映画基本情報

タイトル:希望の灯り(In den Gängen/In the Aisles)
公開年:2018年
監督:トーマス・ステューバー
出演:フランツ・ロゴフスキ、ザンドラ・ヒュラー、ペーター・クルト、アンドレアス・レウポルト
ジャンル:ドラマ/ロマンス
上映時間:125分
製作国:ドイツ
原作:クレメンス・マイヤー「通路にて」

あらすじ

旧東ドイツ、ライプツィヒ郊外の巨大なスーパーマーケット。過去に問題を抱える無口な青年クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)は、新たな仕事として夜間の在庫管理係として採用される。ベテランのブルーノ(ペーター・クルト)に仕事を教わりながら、少しずつ職場に馴染んでいく。ある日、隣のスイーツ部門で働く既婚女性マリオン(ザンドラ・ヒュラー)に一目惚れするが、内気なクリスティアンはなかなか気持ちを伝えられない。やがてマリオンが突然休職し、クリスティアンは心に深い空洞を抱えながら日々の仕事を続ける。巨大な倉庫の通路を舞台に、傷を持つ人々の間に芽生える静かな絆と希望を描いたドイツ映画。

心に残るセリフ・名言集

名言①「夜へようこそ」

“Welcome to the night.”
― ルーディ(アンドレアス・レウポルト)

The Epoch Timesのレビューで確認されているセリフ。最後の客が帰り、夜の静寂の中でスーパーマーケットが動き始める瞬間に、上司ルーディがクリスティアンに告げる言葉です。巨大な倉庫の夜が始まる幻想的な場面で流れるサミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」とともに、この映画の世界観を完璧に提示しています。

名言②「缶詰部門とはうまくいかない。お菓子部門とは問題ない」

“We don’t get along with canned goods. With sweets, we’re fine.”
― ブルーノ(ペーター・クルト)

Variety誌のレビューで確認されているセリフ。夜の倉庫を回りながら、ブルーノがクリスティアンに各部門の人間関係を真剣な顔で解説する場面から。まるで国家間の外交問題のように部門同士の「縄張り争い」を語るブルーノのユーモアが絶妙で、スーパーマーケットが「それ自体のルールを持つ独立した世界」であることをさりげなく示しています。

名言③「戦う男には煙草が必要だ」

“A fighting bloke needs his smoke.”
― ブルーノ(ペーター・クルト)

IMDBに収録されているセリフ。口数が少ないながらも味わい深いブルーノらしい一言。旧東ドイツの工場や現場で生きてきた男の哲学が滲み出ており、喫煙休憩をクリスティアンと共有しながら語られる言葉に、二人の間に静かな絆が育まれていく過程が凝縮されています。

名言④「彼女がいた気配だけは、時々、通路に残っていた」

― クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)のナレーション

コトバミンでも以前から取り上げてきた、映画を象徴するナレーションのセリフです。マリオンが早番になり職場で出会えなくなったクリスティアンが、彼女のいつも働いていたスイーツ部門の通路に立ち寄り、その気配を感じる場面から。言葉ではなく「気配」で愛情を表現するこのセリフが、この映画の詩的な語り口を最もよく示しています。Variety誌が「low-key romantic realism(控えめなロマンティック・リアリズム)」と評したこの映画の本質が凝縮された一言です。

名言⑤「冷凍食品部門はシベリア。金魚の水槽は大洋」

― 職場の従業員たち(Variety誌のレビューより)

Variety誌が「この映画で最も印象的な部分のひとつ」として紹介しているセリフ。冷凍食品部門を「シベリア」、大きな魚の水槽を「大洋(オーシャン)」と呼ぶ従業員たちの独自の命名は、スーパーマーケットが彼らにとって「それ自体の地政学を持つ独立した小世界」であることを示しています。昼の光が入らない閉じた空間に住む人々が作り出した、哀愁と笑いが混じる文化です。

名言⑥「ここには、どんな暗くて冷たい場所にも、明るさと温かさがある」

― 映画の批評家が言葉にしたこの映画のテーマ(IMDBレビューより)

IMDBのレビュアーが「この映画の核心」として書いた言葉。映画の登場人物たちは誰もが何らかの傷や過去を抱えています。元不良のクリスティアン、旧東ドイツの栄光を失ったブルーノ、不幸な結婚をしているマリオン——それでも彼らは職場で互いを気遣い、小さな親切を交わし合います。どんな場所にも希望の光は宿るというこの映画のメッセージを端的に表しています。

この映画が刺さる人・おすすめのシーン

「ハリウッド映画に少し飽きた」「静かで詩的な映画が好き」という人に強くおすすめです。この映画は「日常の中にある美しさと人間の温かさ」を描くことに徹しており、派手な展開は何もありません。特に必見なのは冒頭シーン。夜明け前の暗い倉庫に次々とフォークリフトが現れ、ヨハン・シュトラウスの「美しく青きドナウ」に乗って踊るように動く様子は、まるでバレエのようです。そのギャップとユーモアに、この映画のすべてが詰まっています。また、クリスマスパーティーでクリスティアンとマリオンが肩を寄せ合う場面の静かな感動は、何週間も心に残り続けます。

作品データ・受賞歴

2018年公開。第68回ベルリン国際映画祭コンペティション正式出品作品、エキュメニカル審査員賞受賞。ドイツ映画賞(主演男優賞:フランツ・ロゴフスキ)受賞。ロッテントマトでの批評家支持率は90%。Variety・The Hollywood Reporterなど世界の主要映画誌から高い評価を受けています。主演のフランツ・ロゴフスキは「ドイツのホアキン・フェニックス」と評され、本作でブレイクしました。マリオン役のザンドラ・ヒュラーは後に「落下の解剖学」(2023年カンヌ映画祭パルム・ドール)で世界的スターとなります。

登場人物紹介

クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ):無口で内気な青年。過去に不良グループにいたことを示す刺青を持つ。新たな環境で少しずつ自分を変えようとしている。
マリオン(ザンドラ・ヒュラー):スイーツ部門の女性スタッフ。既婚だが夫婦関係は幸せではない。クリスティアンに興味を持ち、彼を「新人さん」と呼ぶ。
ブルーノ(ペーター・クルト):飲料部門のベテラン。旧東ドイツ時代はトラック運転手で、かつての誇りを失ったことへの寂しさを抱える。クリスティアンの父のような存在。
ルーディ(アンドレアス・レウポルト):上司。「夜へようこそ」というセリフで夜の王国への入口を開く人物。

総評・おすすめ度

おすすめ度:★★★★(4/5)

「静かさ」が武器の映画です。セリフが少なく、展開もゆっくりで、劇的な事件は何も起きません。それでも観終えると、不思議な満足感と温かさが残ります。巨大なスーパーマーケットという「誰も夢見なかった場所」に集まった人々が、互いを支え合いながら生きる姿は、私たちの日常を少し違う角度から見せてくれます。ロッテントマト90%というスコアが示す通り、ヨーロッパ映画の文脈では傑作の評価を受けている作品です。「ハリウッド映画に少し飽きた」という方に、ぜひ観てほしい一作です。

※ 名言の検証について:コトバミンに掲載しているセリフは、IMDb・Variety・The Epoch Times・Spirituality & Practiceなど複数の海外レビューサイトで確認済みです。コトバミンでも以前から取り上げてきた名言については、今回改めて照合・確認しています。検証プロセスの詳細はこちらをご覧ください。